あのことがあって以来、私は医学などは肝要でないと考えるようになった。愚弱な国民は、たとい体格がよくどんなに頑強であっても、せいぜいくだらぬ見せしめの材料とその見物人となるだけだ。病気したり死んだりする人間がたとい多かろうと、そんなことは不幸とまではいえぬのだ。むしろわれわれの最初に果たすべき任務は、かれらの精神を改造することだ。そして、精神の改造に役立つものといえば、当時の私の考えでは、むろん文芸が第一だった。そこで文芸運動をおこす気になった。